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統合失調症の利用者さんに太っている方が多いのはなぜ?自分にできることは何だろう。

読書感想

この本を読んだきっかけ

担当する統合失調症の利用者さんに、太っている方が多く、やせたいと悩んでいる方や、糖尿病の治療をしている方が数人います。

また、今までに出会った方の中にも、恰幅の良い方が多く、家族からもやせてほしいのだけど…、という声が良く聞かれていました。

担当している利用者さんに太っている方が多いのはたまたまなのか。肥満に対して作業療法士として何かできることはないか、ヒントを得たいと思い、この本を読んでみました。

今回読んだ本

統合失調症に合併する

肥満・糖尿病の予防ガイド

監修 日本精神神経学会 日本糖尿病学会 日本肥満学会

編集 「統合失調症に合併する肥満・糖尿病の予防ガイド」

この本(ガイド)の内容

この本ガイドは、精神科医や医療スタッフが適切かつ妥当に診療あるいはそのサポートを行うための臨床的判断を支援する目的で現時点における医学的知見に基づいて作成されたものだそうです。

本ガイドは、統合失調症の身体的予後を改善し、心身ともにバランスの取れたリカバリーを目指していくことの一助になることを願って書かれているそうです。(2020年4月)

この本の目次

  • 第1章 はじめに
  • 第2章 肥満
  • 第3章 メタボリックシンドローム
  • 第4章 糖尿病
  • 第5章 診療連携

太っている(肥満)とは

本のp16に書いてありました。

肥満は脂肪組織にトリグリセライド(TG)が過剰に蓄積した状態を表しており、ただちに病気に分類されるわけではない。しかし、糖尿病や脂質異常症をはじめとした代謝性疾患などのさまざまな健康障害を引き起こすことがあり、日本肥満学会では、肥満に関連して発症する健康障害を有し、医療的に減量の必要な状態を「肥満症」と定義している。

なるほど。太っているのが悪いわけでなく、「肥満症」が良くないのですねぇ( ;∀;)

肥満の判断基準

BMI(body mass index:体格指数)を用いるそうです。

WHOではBMI≧30を肥満としているそうですが、

日本人においては軽度の肥満でも健康障害につながりやすいと考えられており

BMI≧25を「肥満」と定義しているそうです。

肥満症の診断基準に必須な健康障害は以下の11個が挙げられています。

  • ➀耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常)
  • ②脂質異常症
  • ③高血圧
  • ④高尿酸血症・痛風
  • ⑤冠動脈疾患
  • ⑥脳梗塞
  • ⑦非アルコール性脂肪性肝疾患
  • ⑧月経異常・不妊
  • ⑨閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低喚気症候群
  • ⑩運動器疾患
  • ⑪肥満関連腎臓病

統合失調症の方は肥満の人が多いの?

p20に肥満合併の割合が書いてありました。

精神疾患に罹患した集団における肥満の有病割合について、ウエスト周囲長を基準とした海外のメタ解析によると、統合失調症について49.4%と報告されている。

日本の統合失調症患者における肥満の割合は、入院で23.1%、外来で48.9%と高いことから、慢性期の外来通院患者において肥満対策の高いニーズがあると考えられているそうです。

ちなみに、糖尿病については、

統合失調症患者では、一般人口に比べて約2倍の糖尿病合併があるそうです。

肥満と抗精神病薬服用は関係があるの?

p21にこのような記載がありました。

第二世代抗精神病薬による体重増加についての報告が多いが、この体重増加は、第一世代抗精神病薬、気分安定薬、抗うつ薬によっても生じうる副作用である。

とのこと。

また、眠気、ふらつきなど他の副作用による身体活動の低下によっても肥満の進展が加速される可能性があるそうです。

訪問看護で自分にできることは何だろう

ヒントはp23~にありました。

肥満/肥満症に対する指導や治療を開始するにあたり、現実的な目標を当事者に提供して共有することが望ましい。

ちなみに減量目標は現体重の3%以上を設定するそうです。

そして、臨床の現場では、簡便な指標としてウエスト周囲長の測定を行っているそうです。

また、この本には総エネルギー摂取量や運動療法開始前のメディカルチェック項目・運動療法プログラムの原則などが載っており大変参考になります。

そして、p26~肥満の予防は可能かの章に書いてあることをヒントに

自分にできそうなことを考えて書き出しました。

  • 体重の測定やその記録の自己管理を促す
  • 身体的健康についてのリテラシーを高める情報提供(わかりやすい本や資料の提供)
  • 調理法も含めた適切な食事摂取に関する啓発(調理練習)
  • 身体的活動を促進する場を紹介する
  • 健康に関する行動変容に資する心理療法的アプローチ
  • 肥満に関連する健康障害が生じていると思われたら、受診を促す
  • 検診を勧める

このようなことが自分にもできるのではないかと思いました。

まとめ

この本p13にとても勉強になった章があります。

患者の身体疾患治療を行ううえで配慮しなければならないことは何か?

という章にこう書いてありました。

意思決定のサポートが重要であり、それは「サポートする側が良いと思っている選択をさせること」ではなく、「患者の意思決定の質を向上させること」である。

p13

この基本姿勢は忘れないようにしたいと思いました。

ついつい、肥満は良くない!利用者さんには痩せてもらわないと、と思っている自分がいます。

でも、意思決定をするのは本人。質を向上させるのに良い情報をその方に合わせて提供しないとならないと思いました。

そのためには、自分がしっかり知識がないといけないと思いました。

この本には、参考になる資料がたくさん載っているので、とても勉強になると思います。

統合失調症の方だけでなく、精神疾患で肥満を合併している人にも当てはまることが多いので、そのような方を担当した際にも、役に立つ本だと思いました。


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