今回読んだ本
多飲症・水中毒
ケアと治療の新機軸
編
川上宏人
松浦好徳
この本を読んだきっかけ
自分が担当している利用者さんに、とにかく水をいっぱい飲んでいて、どれくらい飲んだか聞いても精査できないのですが、本人いわく2リットルのペットボトルを5本ぐらいと。家族も見てないので本当かは不明。
本人は、主治医から水の飲みすぎで倒れたりすることもあるから注意して。とだけ言われていて、怖いのだけど、水やジュースなどを、いっぱい飲みたくて困っている。と、訴えていました。
幸い、精神的に落ち着かない時にこの訴えが強くなっていましたが、
服薬変更などで落ち着いてきた頃から、たくさん水を飲む様子や、訴えはなくなりました。
これは、いわゆる水中毒っていう症状?今回はすぐに見られなくなったけど、
どれぐらい水を飲んだらキケンなのだろうか。
そもそも水中毒って何なのだろうと、この本を探して購入しました。
この本の目次
- 推薦のことば
- 本書の目的
- 第1部 多飲症・水中毒についてのQ&A
- 第2部 実践編(多飲症専門病棟看護スタッフ)
- 第3部 知識編(川上 宏人)
- 第4部 資料編(多飲症専門病棟看護スタッフ)
本の内容
この本は、「どのようにしたら安全に水を飲める環境を構築できるのか」という悩みや疑問を解決するためのヒントを提供することを目的に書かれた本です。
多飲症・水中毒への斬新なアプローチを確立してきた山梨県立北病院の、ノウハウのすべてがつまっている本です。
水中毒って何?
この本を読むまで、恥かしながら、
たくさん水を飲んでしまう状態を水中毒だと思っていました。
しかし、これは水中毒ではなく、
多飲症に近い症状だとわかりました。
多飲症とは
「多飲症とは、飲水に関するセルフケア能力が低下しているために、体重が著名に増加するほどの飲水をしてしまうことであり、過剰な水分摂取により日常生活にさまざまな支障をきたすことである」
p18
◎多飲症と水中毒ははっきり違うものとして考えるべきとのことです。
では、あらためて、
水中毒とは
多飲症による体内の水分貯留が原因で血液中のナトリウム濃度が低下すること(希釈性低ナトリウム血症)と、それに伴う血症浸透圧の変化により脳浮腫をきたすことで、さまざまな神経・精神症状を呈する状態をいいます。
p146
では、どれくらいの水を飲んでいると危ないのでしょうか?
それについてp40に記載がありました。
多飲症は飲水量のみで決めるべきではありません
と。(個人差があり摂取量や血液検査の結果だけで線引きできないとのこと)
飲水行動がその人の一日の生活にどれだけ影響を及ぼしているか、
そして飲水が自分でコントロール可能なものか、
という点にも、病気かどうかの区別のポイントがあると書かれています。
勉強になったところ
この本は、第4部が資料編となっていて
資料の3多飲症心理教育(患者用テキスト)と、
資料の4多飲症心理教育(スタッフ用マニュアル)
がついていて、この資料が大変勉強になりました。
在宅でこの資料に書いてあることを隅々まで行うことは無理ですが、病院でどうやって治療していくのかや、スタッフの心構えなどがわかり、大変参考になりました。
まとめ
「多飲症を治す」ということは、「水中毒を起こさない」ことでも「過剰に水を飲まないようになる」ということでもないそうです。
大切なのは、その人なりのセルフケア能力に合った方法で自らの飲水行動をコントロールできれば、それは多飲症と共存できており、よくなっているのではないかと。
支援者は、「飲みたい」という思いを受け入れ、「安全に飲んでもらうにはどうすればよいか」という視点を念頭に持つことが大切だそうです。
これからは、多飲傾向を早めに気づいて、セルフケア能力をあげられるよう関わっていけるようにしようと思いました。
水をたくさん飲むことに困っている方がいたら、関わり方のヒントがたくさんあるので、ぜひ読んでみることをおすすめします。
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